最終回「沖縄空手体験記 まとめ」
今回の沖縄の旅はわずか5日間でしたが、その内容は濃密であり、世界中の空手愛好者にとっては垂涎の旅であったと確信しています。
もともとは沖縄空手の達人に教えを受けるという武道雑誌の企画で、それが台風で中止になったのですが、出稽古を受け入れてくれる道場があるということが分かったため、沖縄空手エージェントや各先生に個別にお願いし、今回の体験稽古が実現しました。
雑誌の企画であれば、達人一人に生徒40人という形でしたので、かえって良かったと思っています。
こうした経験が出来たのも空手を長く続けてきたからであり、三村師範のもとで現在も極真空手を修行しているからであり、実家の前の家にたまたま沖縄空手の伝承者が住んでいたという偶然のような必然が積み重なって、点が線になったという感じです。
ただ、空手初心者や子供たちに言っておきたいことは、最初の数年間は一人の信頼できる先生に師事して、しっかり基本を身につけることが大切だということです。
自分の空手の軸ができていないのに、色々学んでも中途半端になるだけです。
昨今はインターネット上に玉石混交の情報がありますから特に注意が必要です。
私は現在極真空手を指導する立場にありますので、極真空手の大会で勝てるようにルールにのっとった技や、三村師範を通じて学んだ大山総裁の極真精神を道場生にしっかり伝えていきたいと考えております。
それとともに、私自身が空手修行者、研究者としてまだまだ学ぶことが多いことを今回の沖縄の旅で確認できたことが何より嬉しく、毎日の楽しみが増えました。
これからも空手修行は続きますが、空手は道場や大会だけではなく、人生に生かしてこそその真価が発揮されると思いますので、最後に私の好きな言葉を紹介します。
「長年修行して、体得した空手道の技が、生涯を通して無駄になれば、空手修行の目的が達せられたと心得よ 喜屋武 朝徳(きゃん ちょうとく。戦前の沖縄空手の大家)」
「侍は刀を常に磨いてさやの中におさめておく。抜かない。抜かないところに侍の価値がある。 大山 倍達」
時代や場所が違えども、空手の達人がおっしゃっていることは同じですよね。でも、大山総裁の言葉には続きがあります。
「(刀は)めったやたらと抜いてはいけない。でも、抜いたら一刀両断だよ。」
つまり、常に体を鍛え、戦いに備えよということです。人生の荒波に負けるなということも意味しているのだと思います。
こうした理論だけではない実戦性というか迫力が大山倍達総裁の魅力だったと思います。
今回、お世話になった沖縄空手の達人の先生方、幼少期、沖縄空手に接する機会を作っていただいた神崎先生、そして、極真空手を創設した大山倍達総裁とそれを大分県に伝えてくれた三村師範を始めとした空手を通じて出会ったすべての人に尊敬と感謝を込めて。
押忍 上原秀雄